群れまくってる青

物語の感想とか色々出します

あまりウルトラマンを知らない男が見た『シン・ウルトラマン』の感想

遥か空の星がひどく輝いて見えたから──

 

 この歌いだしを耳にしたとき、私は感嘆した。
 たった1人の人間の行動から抱いた興味。そこから始まった物語、その結末にピッタリと当てはまる歌詞の凄まじさに、心を打たれたのだ。

 『ウルトラマン

 それは、誰もが聞いたことがあるであろう国民的な特撮ヒーローである。銀と赤を基調とした体躯、両腕をクロスして放たれる光線、胸のカラータイマーというイメージは、特撮ヒーローに触れたことのない者でも容易に想像がつくだろう。
 それが2022年、樋口真嗣監督と庵野秀明氏の手で『シン・ウルトラマン』という名で制作されるというのだ

 見なければならない。私はヒーロー物語が好きだ。前の『シン・ゴジラ』も面白かった。PVもカッコいい。そもそも見に行かないという理由がなかった。
 そんなわけで当然のように映画館へ赴いた。しかし、私には大きな問題があったのだ……

 ちゃんと『ウルトラマン』を見始めたのが最近なんで全然分かんねぇ!

 そう、友人に勧められて『ルーブ』を視聴するまで、私の見たことあるウルトラマンは幼少期の『マックス』のみである。どうしようもなく昔から"東映特撮ヒーローっ子"だったのだ。
 楽しめるのかという心配はなかったが、見るにあたって視点がズレてしまう可能性は否めないのである。設定などはからっきしである。
 というわけで2回見た。1回目は1人。2回目は前述の友人とである。そうして2つの視点で見た感想(大して2つとも変わらない) を以下で述べようと思う。
 では、どうぞ

 

[:1.筆者のウルトラマン理解度

2.PVと冒頭のアレ

3.本編
 3.1ネロンガ
 3.2ガボラ
 3.3ザラブ編
 3.4メフィラス編
 3.5ゼットン

4.まとめて

5.次の『シン』への期待]

 

1.筆者のウルトラマン理解度

 話に入る前に筆者のウルトラマンに対する理解について述べたい。そもそも、まったくウルトラマンを知らないならいいものの、微妙に知ってはいるものだから、変に中途半端なコメントになってしまうので始末に悪いのだ。
 ということで、この「読者が釣れそうだぞ、とタイトルをニヤニヤ作ったクソ筆者」がどの程度のレベルなのか、その指標を記しておく
 私の見たことのあるウルトラマン作品は以下の通りだ

 マックス(幼少期)→ルーブ→ゼット→マックス(YouTube配信)→ジード→デッカー(現行)

 これらは時系列でなく見た順に記している。まったく、どれも面白い作品だった。特に『マックス』と『ジード』に対する愛があふれ出して止まらない。
 マックスの多種多様なストーリたちは見ていて飽きないし、ジードは筆者が「作られたヒーローが本物になる」という物語が大好物なことが大きく起因している。最高。
 
とはいえ見れば分かる通り、履修している作品が『ニュージェネレーションシリーズ』のものが多いのだ。つまり、樋口氏&庵野氏が書こうとしている『ウルトラマン』とは毛色が違うのである。
 昭和、平成、ニュージェネと、どれも時代に応じて作られた素晴らしい作品群と思われるが、やはり作風の違いが現れてしまうのは否めないのだ。そのため、筆者のウルトラマン知識はほとんどニュージェネに偏っており、光の国などに対する理解は前述の作品以上のものは持っていないと理解して欲しい。
 へぇ!ゼットやマックスが暮らしている星なんだ!←超安直な理解

 

2.PVと冒頭のアレ

 というわけで『シン・ウルトラマン』に入ろう。私が本作の感想を述べるうえで外したくなかったのは、公開前の予告PVである。

 そう、あのPV……めちゃくちゃカッコいいのである。

 
最近は『閃光のハサウェイ』だったり『BLACK SUN』だったりと、カッコいいPVや特報が多すぎる……
 カッコいい怪獣、カッコいいBGM、不気味に立っているウルトラマン、好みなスペシウム光線のSE、不気味で胡散臭い山本耕史……気になる要素が多々あるのだ。
 そしてセリフや雰囲気から伝わる「ウルトラマンは敵か味方か……」感。そりゃワクワクもしますよ。
 これからどのような物語が始まるのか、どんな結末を迎えるのか……妄想が捗っちゃいます。見に行くと決めるのは即決でした。

 そして始まった本編。
 最初は『シン・ゴジラ』というタイトルが『シン・ウルトラマン』に変化するというシーンから始まりましたね。1回目の私は「シン・ゴジラの次だからこういう演出にしたのか~へぇ~」と思ってました。……オマージュである。
 
どうやらウルトラマンが始まった時、前作の『ウルトラQ』から『ウルトラマン』にロゴが変化する演出があったそうですね!初っ端からですか制作陣!
 また次のシーンでは「怪獣出現!」という演出。本編時系列前に現れた"禍威獣"が世界観説明と共に続々登場しました。1回目の私はこう思いました。

「独特な説明、そしてワクワクする世界観だ!禍特対の面々も多様で良い!」

 オマージュだった。これらは前述の『ウルトラQ』に登場した怪獣たちらしい……そう思うと、樋口さんや庵野さんの"ウルトラ愛"の凄まじさを感じる……!
 いやぁ、でも知らなかったとはいえ、良い冒頭だと心の底から思いましたよ。だってどの禍威獣の話も見てみたいと感じてしまう。怪獣や謎の生物の魅力には抗えない……私は「マンモスフラワー」が見たいのですが、皆さんはどうでしょう?

 こんな感じで、私は「オマージュとは気づくことなく、そのシーンを褒めちぎる」ということをしながら、『シン・ウルトラマン』という世界の魅力に自然と引き込まれることとなったのだ……

 

3.本編

 遂に本編の感想に入る。長々語って申し訳ない……
 とりあえず、登場した禍威獣と外星人で1つ1つ節に分けて感想を述べたいと思う。

3.1ネロンガ

 さぁ、記念すべき一番最初の禍威獣は───ネロンガである。私は興奮した。

 「俺、あの怪獣見たことある!」

 そう、ネロンガウルトラマンゼットの第2話でも登場しており、推しのアルファエッジと激闘を繰り広げていたのだ。
 ぶっちゃけ「知っている怪獣は出ないだろう。逆に好きな怪獣を増やそう」と思っていた。しかし、"知っている怪獣"が出たのだ。なんたる僥倖だろう。
 そして冒頭、禍特対の面々が自衛隊の拠点にゾロゾロと現れ、電気を喰い散らかすネロンガへの対策を、それぞれの知識を持ち合って考えていく。思いつけば即提案し問題点を分析する様は見ていてとてもカッコよく、なんか良い。そう、私はなんかカッコいい、なんかオシャレなシーンが大好きなのである。
 そして話が進んでいく。対策案が行き詰まる面々、残った子どもを助けに外へ出る神永さん。そして飛来してくる謎の物体……そう、ウルトラマンである。
 その姿は全身銀色。顔もなんか怖い(そういうスーツがあるらしいですね!)。「うん?これは、ウルトラマンだよな……?」と、姿はそうであるというのに、少し戸惑った。
 ウルトラマンというヒーローではなく──飛来してきた、謎の巨人。
 禍特対の面々も私と同じく戸惑い、そんな反応を知るよしもなく、ウルトラマンネロンガの電撃を胸で受け止める。なんという皮膚の固さか。友人曰く、これも初代ウルトラマンがやったことらしい……初代ってすげぇ!
 スペシウム光線もキャラクターの「なにをする気だ……?」という反応が結構新鮮でした。たしかに何も知らずに見ると「なに……そのポーズ……」となりますよね。当たり前に放たれるスペシウム光線は、やっぱりSEが好みですし、威力も派手でした。

 このネロンガ編、起承転結の"起"として本当に良かった……禍特対の頑張り、謎の巨人の襲来と活躍。ド派手なスペシウム光線。シーンの1つ1つに引き込まれ、気づけばシン・ウルトラマンに夢中になっていました。

3.2ガボラ

 次は、私がシン・ウルトラマンで一番心を奪われた禍威獣、ガボラである。
 エリマキドリル!顔のデザイン!激やば光線!くぁー!すごくクールだぜ!
 ……失礼致しました。というわけで、この回から禍特対に浅見さんが加わります。神永さんと浅見さんの掛け合いはかなり好きでして、なんというか……活発さのあるキャラと寡黙でミステリアスなキャラの組み合わせが好きなのかもしれません。その神永さんのミステリアスさ───どこか人間の社会や文化を確認するようなセリフから、「お前、中身ウルトラマンか……?」と思わせてくれる描写も良いですよね。
 そしてガボラです。移動しながら放射能まき散らす迷惑な禍威獣を前に、人間に被害が及ばないようにするウルトラマンの姿は、彼は人間に友好的かもしれないと思わせる充分な描写でしたね。謎の巨人から、人類の味方かもしれない巨人へのランクアップです。
 あと船縁さんの「激やば光線」や最後のドヤ顔神永など、コメディ色強めなんだなと作風の方向性が分かりやすかったです。

3.3ザラブ編

 まさかウルトラマンで自主規制音を聞くことになるとは……
 ここで相手は禍威獣から外星人へ変わりましたね。本音を言うと、ウルトラマンの話は怪獣よりも異星人の話の方が好みな傾向にあるので、ワクワク度合が高まりました。なにより、私はザラブを知らないので。
 この話の肝は「ウルトラマン=人類の味方」という文脈の完成と、「ウルトラマンがバディを理解しようとした」という部分だと思います。
 今までは「あいつは人類の味方なのか?」という疑いの目があり、偽ウルトラマンで「いや、やっぱり敵じゃん!」させ、最終的には本物が現れる。ザラブが政府を騙していたことが露呈し、またそれを仕留めるウルトラマンの行動は、”かもしれない”が"確信"に変わる瞬間だったのかもしれません。
 バディに関しては、この話で大きく関係が深まったというよりも、神永(ウルトラマン)がガボラ編での話から"バディ"について考え、それに基づいた行動したという点が注目でした。つまり、彼は人間を理解しようとしているんだなと確信したわけです。
 また、ちゃんと正体を明かすことによって、ある種「禍特対」という仲間が形になった瞬間なのかもしれませんね。
 このガボラ、ザラブ編は人間がウルトラマンを知る、ウルトラマンが人間を知るという章だったと勝手に考えています。
 ちなみに、ウルトラマンがチョップで痛がってるシーンがありましたが、あのシーンは「やっぱシンウルはコメディ色なんだな!」で納得してました。はい、オマージュでした。

3.4メフィラス編

 ここで展開が変わっていきます。そう、メフィラスの登場です。胡散臭い雰囲気、「ベータシステム使えば人類って有効な兵器じゃね?」という冷徹さ、そしてお前人類好きだろという行動の数々。まさにシン・ウルトラマンを代表するキャラクターと言えるでしょう。
 これは個人的な話なのですが、私は公開して数日経ってから本作を見に行ったので、Twitterでのメフィラスの盛り上がりから、勝手に「シン・ウルトラマンのラスボスはメフィラスって奴なのか!」と思っていました。
 まぁ、勘違いなんですが、あながち間違いとも言えないのかもしれません。今までの禍威獣などは全部メフィラスの策によるもので、ある意味で本作の黒幕的存在でしょう。
 ここで重要なのは、神永とメフィラスに対する"人間への想いや認識"の差異と考えています。メフィラスは前述の企みなど、上位存在の立場から人間を見ている節がありますが、神永はもっと純粋に「人間……気になる……!」みたいな感じがします。感覚的で申し訳ないですが……
 ゆえに、神永はベータシステムを渡そうとするメフィラスを危険視し、止めようとしたのでしょう。これは人類はベータシステムを持つべきなのかという話であると同時に、これは2人の価値観のぶつかり合いなのかもしれません。
 だが、その戦いは途中で止められます。そう……ゾーフィです。

*1

3.5ゼットン

 遂に最終章です。現れる光の星のゾーフィ、神永とウルトラマンの状況、このまま生かすと大変なので惑星ごと壊しますなゼットン起動、色々ありましたね。
 そう、ゼットンです。ちゃんとラスボスが出ました。メフィラスではなかったです。なんかメカメカしくて大興奮ですよ。
 やはり、この話で重要なのはウルトラマンは神ではない」ということでしょう。人間とは贅沢なもので、ウルトラマンが人類の味方と確信してからというもの頼りっきりです。
 しかし、彼も1人の生物。ゼットンなんてものには負けてしまいます。それでもゼットンに立ち向かう、ウルトラマンの強い人類への気持ちは本物でしょうが、それに人間は応えられるのでしょうか。そんな話、結末に思えます。
 この話、実は個人的には不満が結構あります。私も人間なので我儘なのです。
 まず、もっと人間には頑張って欲しかった!
 これには個人的な嗜好の話もありまして……私は人間の可能性を信じる話が好きなのです。つまり、神永さんのUSBだったり最終的にはウルトラマン頼りの展開には、少し「人間!もっと頑張ってくれよ!」と思ってしまう。しかし、神永さんがUSBを渡したところで「急に人類に成長を促すようなことになってゴメンね」みたいな、自分から成長して欲しかったんだけど……みたいな描写があったので、納得はしています。
 あとは戦闘シーンなんですが、ちょっとゲームっぽい動きは気になりましたね。分裂八つ裂き光輪とか、ウルトラマンへの火の玉マシンガンとか。ですが、私はプロじゃないので、ここら辺はよく分かりません。とやかく言うことではないでしょう。
 とはいえ……幾つかの不満があるとはいえですよ……やはり最後まで人間のために戦い、人間について考え「……分からない」と答えたウルトラマン(リビア)、そんな彼に対して「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン」と返すゾーフィがすごく良かった……そうですよね、好きという感情は理屈ではありませんから。そういう人間や作品に出会った人も数多くいることでしょう。
 そして最後にはウルトラマンの真っすぐな好きを受け入れ、ゾーフィが彼の望みを聞き入れる。本当に『シン・ウルトラマン』らしいゴールといえると思います。

 

4.まとめて

 以上を通して、私の中で『シン・ウルトラマン』は「起承転結が綺麗な作品」となります。
 起(ネロンガ)で謎の巨人とのファーストコンタクト、承(ガボラとザラブ)でウルトラマンと人間の関係の確立、転(メフィラス)で今までの戦いの関連と外星人による人間の認識の違い、結(ゾーフィとゼットン)で人間がウルトラマンに応えられるのか、リビアの人間対する感情はなんなのかが示されました。
 この分かりやすさ、展開の綺麗さはオムニバス形式ゆえの強みともいえるでしょう。まさにウルトラマンの魅力です。
 もちろん前述のような不満もありました。しかし、それを些細なものにするほどの力が本作にあったように思います。

 しかし!私が本当にシン・ウルトラマンに送る言葉はこれではない!

 
先ほど言った通り、好きとは理屈ではないのだ。上記は見終わって、色々と足りない頭で考えたゆえの結論であり、本作に対する想いはたった一言で良いのだ。

 「人間を好きでいてくれてありがとう!ウルトラマン!」

 

5.次の『シン』への期待

 申し訳ない。多分さっきので終わった方が綺麗なのだが、もう少し語らせて欲しい……
 前作の『シン・ゴジラ』や本作の『シン・ウルトラマン』、そしてアニメでは完結となる『シン・エヴァンゲリオン』、このシン・シリーズはこれらだけでは終わらない。
 そう、『シン・仮面ライダーである。
 最初に述べた通り、私は根っこからの"東映特撮ヒーローっ子"である。幼少期は『響鬼』、『カブト』、『電王』、『ボウケンジャー』などに心を躍らせ、『ゴーカイジャー』と『フォーゼ』で卒業したと思いきや、唐突な『ビルド』での特撮ヒーロー再熱。やはり客観的な視点で見ると、次の作品の方が距離感は近いのだ。
 『シン・ウルトラマン』は私を全力で楽しませてくれた。ならば次作への期待値も上がってしまうというもの……
 私は初代仮面ライダーに詳しくないし、なんなら今視聴している途中だ。しかし、親近感は強い。「今度はウルトラファンが『シン・ウルトラマン』を視聴した感触で『シン・仮面ライダー』を見れるのか」という謎の楽しみもある。
 仮面ライダー庵野秀明さんはどのような愛を爆発させるのか、心待ちにしている。

*1:ちなみに、メフィラス星人に関して筆者は、デザイン(もちろん初代の)だけ知ってました